囲炉裏端から

主として趣味に関わる様々な話題を、折に触れてエッセイや紀行文の形で自由に書いてゆこうと思っています。過去に書いた文章も適宜載せてゆきたいと考えています。

 先日、「大原美術館展 Ⅱ」を見に行って来ました。1920年代のパリで活躍したヨーロッパと日本の画家達の絵画を中心に、71の作品が展示されてゐました。ルオー、マティス、マイヨール、シャガール、ミロ、藤田嗣治、佐伯祐三、小出楢重、岸田劉生、棟方志功・・・たくさんの素晴らしい作品に出会ふことができ、得難いひと時を過ごすことができました。美術展を見終はった後の、あの満ち足りた気持ちは中々言葉では表現できません。
 だからこそ、「芸術」といふものがあるのかもしれません。美術、音楽、文学・・・一時日常を離れて、何かに接し、何かを得て、また日常へと帰って来る・・・
 そんな繰り返しの中で私達は一日一日を過ごしてゐるのかもしれません。日常と非日常との微妙なバランスの中にこそ人生はあるのかもしれない。そんなことを考へさせられた一日でした。

【還暦記念ツーリング。本州・四国の旅】(第70回・・・最終回)
小樽港到着、八時四十五分。「現在の天気は晴れ、気温は二十八度です」との船内放送あり。夜なれば、実感できず。ただただなつかしい!ほつとする!

  ふとアメリカに着きし日の若き熊楠を思ひ

  おお、小樽!なつかしい小樽が街の灯が人里が

  なつかしい妻のこゑが胸にしみて旅の終はり

北海道上陸!九時丁度。バイク一番乗り!

通ひ慣れた道、二度に渡って「通勤の道」となつたこの道・・・今はただひたすら手稲の自宅へとひた走る。ゆつくりと、慎重に、「無事安全こそ最高の土産!」と何度も心の中で繰り返しながら・・・昨日の出来事を思ひ出しては更に一層気を引き締めながら・・・

自宅到着、九時三十七分。走行距離二十二、八キロ。心底ほつとする!家がなつかしい!ほぼ二週間ぶりの我が家・・・

  「お帰り」妻の笑顔が旅の疲れを癒してくれ

  二週間ぶりの書斎 心が落ち着き

  やつぱりここがいい 妻がゐて子がゐて本があつて

 

かうして、ここに、七月十四日(日)から二十六日(金)まで、およそ二週間に渡る長い旅が終はった。真夏の炎天下、たつた一台のオートバイを友として、ただ只管(ひたすら) 走り続けた、過去最大規模の大ツーリンクが終はった。

還暦を記念して、自らのルーツを尋ね、二人の子供達と一人の友を訪ね、尊敬措く能はざる良寛さんと熊楠の足跡を慕ふ旅。初めての四国、湯淺町・・・

全走行距離およそ三千キロ(二九六九、四キロ)、芭蕉の「前途三千里の思ひ胸に塞がりて」といふ言葉が自ずと思ひ出される。

「調子」吹くゆつたりと感謝の念を込めて

 

家族全員にメールを送る。午後十時十三分。

日は照り渡り海穏やかに旅終はる

おおいなる御力のもと生きてあり

   手を合はせ頭を垂れてただ感謝                  (完)  

【後書き】昨年6月19日に第1回を掲載して以来およそ1年。途中、種々の事情によりかなり長い休止期間もありましたが、何とか完結にまで漕ぎ着けることができました。これも読者の皆さんの御支援、御愛読の賜物と心より感謝申し上げます。






【還暦記念ツーリング。本州・四国の旅】(第69回)
「第十三日。七月二十六日(金 )曇り」 

 

起床七時。「いよいよ今日で最後か。いよいよ北海道へ帰るのか・・・長いやうで短く、短いやうで長い二週間だったなあ・・・」暫し感慨に耽る。「とにかく無事に帰ることが最大最高のお土産だ。慎重の上にも慎重を期して走らう」

今日はいよいよこの長く思ひ出多き旅の最終日。本当に最後の最後まで色々なことがあつた・・・

朝の行の後、読書をゆつくりと、たつぷりと、じつくりと。なにせ他にやることとてない海の上・・・久しぶりの読書三昧。堪能す。

佐渡見えず良寛さんを偲びつつ

日の光海を照らしていまここに

   
    「万葉集」を読む (巻三 相聞)

古への日の本人の心見ゆ清かり明かり直かりき

良寛さんを読む心がゆつたりととけてゆく

 

八時。佐渡島沖を航行中との放送ありたれど見えず。朝食。

九時五十分。山形沖二百キロメートル航行中との放送あり。

十時~十一時半。眠る。流石に旅の疲れが出て来たか・・・

十一時五十分。秋田県龍崎沖航行中。

十一時五十五分~一時十五分。ツーリングノートと地図で今回の旅を振り返る。

午後一時十五分~一時四十五分。家族へのメールと家族からのメールを読み返す。

たのし、ありがたし。

三時~四時半。眠る。他にすることもなく疲れも残り、いくらでも眠れる感じなり。

四時三十七分。一瞬なれど携帯電話つながる。十二時二十一分のメール届く。

   妻からのメールが何ともなつかしく 

五時頃。夕食。おにぎりが美味い。こんな素朴な食べ物も少ないが、またこんな美味い食べ物も少ないやうな気がする

五時半頃、家族に送るメールを書く。(多分、小樽港に着いた時点で発信したと思はれるが、旅の手帖には記録なし)

五時五十分、岩内沖を通過。「ああ、もうすぐだ!そこに北海道の陸地があるんだ!」

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