囲炉裏端から

主として趣味に関わる様々な話題を、折に触れてエッセイや紀行文の形で自由に書いてゆこうと思っています。過去に書いた文章も適宜載せてゆきたいと考えています。

【還暦記念ツーリング。本州・四国の旅】(第54回)
興国寺を後にして、一路白浜を目指してひた走る。次はいよいよこの旅の最大の目的の一つたる「南方熊楠記念館」。いやが上にも心昂ぶる。途中、紀伊田辺を過ぎる。熊楠生誕の地!時間があれば帰りに寄って行きたいものだ。三十年ほど前に一度訪れたことがあり、その時には熊楠の愛嬢文枝様にお会ひしたものだつた。熊楠の思ひ出話を聞き、書斎、書庫などを見せて頂いたことが鮮明に思ひ出される・・・あれから早くも三十年・・・海が見える。白浜の美しい海が・・・逸る心を抑へながら、海辺の道をひた走る。

 

「南方熊楠記念館」に向かふ。少しずつ暗くなってくる。途中で道に迷ひ、通行人に聞く。

【還暦記念ツーリング。本州・四国の旅】(第53回)
 興国寺を歩く(二時半頃~三時十五分)。静かなり。余りに静かなり。少し歩くと大きな山門。軽トラックが止まり、庭師が作業をしてゐる。ちよつと間がわるいなあと思ひながらも、古びて如何にも由緒正しく趣のある寺を眺め、松の大木を仰ぐ。木蔭には涼しき松風、どこからともなく聞こえてくる美しいうぐひすのさへづり・・・さうして、夏を鳴き切る蝉時雨・・・暫く物思ひに耽る。ふと気がつくと、庭師が帰って行かうとしてゐる。正直ほつとする。頭を垂れ、手を合はせる。心が落ち着く。澄んでくる。作法に則(のっと)って尺八を捧げ持ち、拝礼し、「調子」を吹く。心の中に静かに感動が広がる。沁み出す。「到頭来た。初めて我が国に尺八が伝へられたこの寺へ・・・」感無量なり。

  うぐひすのさへづりに「調子」の調べ響き合ひ

  松風とうぐひす調子蝉時雨

【還暦記念ツーリング。本州・四国の旅】(第52回)
 醤油発祥地史料館へ行き、説明を聞き、土産の醤油を買ふ(十三時五分~十三時五十五分)。外は耐えられぬほどの暑さなれど、建物の中は涼しい。冷たい飲み物を飲みながら、映像を見、説明を聞く。佛教と醤油、味噌、更には尺八との浅からぬ因縁に思ひを馳せる。ここまで四十四、一キロ。さて、今日はどこまで行かうか・・・次はどこへ向かはうか・・・まだ、少なくとも三、四時間は走れる・・・ 

 
湯淺町を出る。先づは白浜目指して南下する。途中に由良の興国寺あり。地図を見れば一時間ほどで行けさうな距離なり。そこは、我々竹道に精進する尺八吹きにとつては謂はば「聖地」。中国から日本へと尺八を伝へた一代の傑僧心地覚心の開創になる真言宗の寺である。白浜の「南方熊楠記念館」は恐らく午後六時までの開館だらう。さうゆつくりしてはゐられない。寄るべきか否か迷ふ。紀伊由良に入る。「興国寺」の標識あり。時間は二時頃。思ひ切って寄ることとす。一度迷ふが、比較的順調に「興国寺」の門に至る (二時半頃。ここまで六十六、七キロ)。晴れ、青空、暑し。バイクを止め、尺八を取り出し、参道に向かふ。

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