【還暦記念ツーリング。本州・四国の旅】(第39回)
 
早速、阿南市へ向かふ。隣町なればほどなく着く。地図を頼りにひた走る。どんどん田舎になつて来る。羽の浦町交番で道を聞く。若く親切な警察官二人。「還暦を記念して、北海道から一人でバイクで来ました。自分の御先祖様の地、ルーツを探してゐるんです」と言ふと「さうですか。わざわざ北海道から来たんですか。自分の家のルーツを尋ねて・・・」と甚く感激してゐる。地図を出して熱心に調べてくれる。ありがたし。言葉に訛りは殆どない。ちょっと寂しい気もする。方言は日本から消えて行くのだらうか。それぞれの地域、地方にそれぞれに固有の独特の方言があるといふことは実にすばらしいことだと思ふのだが・・・人間一人一人顔が違ひ、個性の違ひがあるやうに、言葉にもその違ひがある。それこそが文化の豊かさ、大きさであり深さであると思ふのだが・・・何もかもが画一的になり、都会的になることは少しもいいこととは思へない。さびしい。三十分ほど話す。

既に六時半近く、流石に薄暗くなつて来た。今日はもう諦めてルーツ探しは明日にしようかと考へてゐると、それを察したかのやうに警察官が言ふ。「こっから先はどんどん田舎になつて行くばかりですよ。ルーツ探しは明日にした方がいいと思ひますよ」今日の宿もまだ決まってゐない。引き返すこととす。徳島ユースホステルに電話す。部屋は空いてゐる由。予約し、地図で確認した上で向かふ。途中一二度聞いただけで比較的順調に探し当てる。