【還暦記念ツーリング。本州・四国の旅】(第59回)
 
一体どのくらゐ時間が経ったのか・・・文字どほり我を忘れ夢中になって、次から次へと展示を見続ける・・・その内、ふと我に返る。理性が常識が一瞬蘇る。親切にも「まだ暫く帰りませんので、ゆつくり見て行って下さい」とは言ってくれたものの、これでは余りにも迷惑をかけすぎだらう。さう思った時には、既に一時間が経過してゐた!あつという間の一時間・・・流石の非常識人も申し訳ないと切に思った。閉館時刻を過ぎてゐたのを入れてくれたのさへ異例の好意だといふのに、これでは甘え過ぎた。本当に名残惜しいが、そろそろ帰らねば・・・

「あのう・・・申し訳ありませんでした。すつかり夢中になつてしまつて時間が経つのも忘れてゐました。こんな時間になつちやつて・・・」「いえ。いいんです。ちよつと前に仕事が終ったところですから」「さうですか。それならいいんですけど・・・」聊かほつとする。大慌てで記念スタンプを二つ捺す。その側には熊楠関連グッズ。普段は余りかういふものに興味をもたないのだが、相手が熊楠とあつては話は別だ。熊楠Tシャツを一枚買ふ。