それから、近づいて眺めたり、さはつたり、考へたり・・・中を覗き込むと鑿の刃の跡が規則正しく刻み込まれてゐる。それは殆ど、意識的に彫られたと言っていいほどの美しさ、見事さであった。

 後日、新聞記事によって偶然わかったのであるが、この丸木舟は、千歳川と豊平川で今年も行はれたアイヌの人々の儀式、「アシリチェップノミ」(新しい鮭迎への儀式)に使われた由緒正しい船なのであつた。それは、アイヌの人々がカムイチェップ(神の魚)である鮭を迎へるための伝統的な儀式なのださうだ。