ふと見れば一瞬たりとも絶えることなき川の流れ、時の流れ・・・長い長い気の遠くなるやうな地球の歴史、それに比べればまさしく一瞬とも言ふべき人類の歴史、その中にゐる微小なる自分、その一生の中の一日、その一日の何時間か・・・「行く川の流れは絶えずしてしかも元の水にあらず。よどみにうかぶうたかたはかつ消えかつ結びてとどまりたるためしなし」気がつくと、この一節を私は何度も心の中で呟いてゐた。我々凡人に独創的な考へなどといふものはない。全ては嘗て誰かによって考へられ、表現されたものなのだ。さう思はれてならない。「逝く者は斯くの如きか。昼夜を舎()かず。」「萬物は流転す。」それは洋の東西を問はない。進歩も発展もない。流れと変化と循環とがあるだけだ。