長い中断を挟みながら、細々と続けて来たこの連載も今日で終はりです。
呆れず、明らめず(笑)読み続けて下さった読者の皆さんに心から感謝いたします。



晴れ、青空、暖かし。暫くぼんやりと景色を眺める。舟が流されぬやうに時々気を配り乍ら。先程の釣人がやって来て話しかける。彼も来年からカヌーを始めると言ふ。近く富良野の金山湖で講習を受けるのださうだカナディアンカヌーに乗ると言ふ。話が弾む。「お互どこかでまた会ふことがあるかもしれませんね。その時は宜しく。」名前も告げずに別れる。本当にどこかでまた会ふかもしれない。同じカヌーに乗る者同士として。しかし、ここで名を告げれば・・・うそになる。そんな気がした。彼もきっとさうおもったことだらう。舟を岸にあげ暫く乾かす。船体布を拭く。彼が去っていった方から若い男女がやつて来た。私と舟とを恥づかしげもなく見てゐた。仲良くしなさいよ、と思はず心の中で呟く。若い時代はさう長くは続かないのだから・・・俺ももう年か。苦笑する。

                                                                                    (完)