今日の札幌は時折雪、再び冬に逆戻りしたやうな寒空・・・また、バイクやカヌーが遠ざかってしまふのでせうか・・・

  -木の舟、鐵の馬  第三部- (4)


(四) 美々川を下る
                               

      (1)船出

                                

 舟を組み立てる。川に浮かべる。眞横にすると、舟の舳(へさき-みよし、船首、バウ)と艪(とも-船尾、スタ-ン)が兩岸にぶつかりさうになる。曇り、風やや有り、少しく肌寒し。出發十二時二十分。ゆつくりと漕ぎ出す。川幅五~六メ-トル、大量の水草、さうして振り返れば先程の小さな橋(美々橋と言ふらしい)。少し晴れ間が見える。ゆつたりとした氣分、心が次第に日常から離れて行く。川は殆ど流れてゐない。パドルを漕ぐ手を休めると、舟は止まる。邊りを眺める。小鳥の囀り、紅葉、山葡萄、南天のやうな實、薄(すすき)・・・秋の色濃い森の中に、ほの見えた小さな動物・・・斜面を登つていく狐。尾が白い。時折、濃い緑の山菜のやうな水草。靜かだ。空が青い。蛇行を繰り返しながら、ゆつたりと流れる細い小川。あちこちに張り出してゐる木の枝。かはすのに苦勞することもある。そのうちに川幅が廣がつて堂々たる大河になるのだらうか。鴨が一羽水先案内をしてくれる。小さな鉄橋を潜る。道路の下を潜る。少し川幅が廣くなる。七、八メ-トルか、時には十メ-トル以上。鴨が數羽、何種類かの野鳥・・・次第に薄が多くなり、濕原の樣相が濃くなる。秋の氣配また色濃し、空も山も木々も川も・・・