【還暦記念ツーリング。本州・四国の旅】(第32回) 
エンジンをかける。煙が出すぎだと言はれる。オイルを見ると大分減ってゐる。磐田の街でバイク屋に寄り、補給する。これで一安心なり。相棒はかなりメカに強いやうだ。既にうす暗い。スタージスの後について走る。相棒は時々地図を見ては複雑な道を走る。信じられないやうな地理感覚!来たのは初めてだが、食堂でアルバイトをしたことがあり、出前で慣れてゐるからだと事もなげに言ふ。方向音痴の自分にすれば、殆ど天才的とも思へる異能の持ち主だ。さう言ふと、「いやあ、そんなことないですよ。慣れですよ」と笑ってゐる。世の中には色々な人間がゐるものだ・・・これも旅の楽しみの一つと言ふべきか・・・

八時~八時半、磐田の湯(静岡県)。結構大きくて、きれいなすばらしい温泉。久しぶりでのんびりゆつたりと湯に浸かる。旅の疲れもすつかりとれる。日本はいい!

 九時、ライダーハウス到着。ここに来るまでも随分複雑な道を走った。流石に一度だけ間違へる。しかし、この夜に、初めての道で、ただ一度!ただただその異能に呆れるのみ!自分一人では辿り着けなかったかもしれない。

 荷物を下ろし、付属の飲み屋(じつは逆で飲み屋のオーナーがバイク好きでライダーハウスをやつてゐる。)で夕食。うまい。客は我々二人のみ。バイク、ツーリング話で盛り上がる。相棒は滋賀県出身で東京在住。今回は土日に親元へ里帰りするのださうだ。途中まで一緒に走つて案内してくれることになる。願ってもない話なり。本当に幸運なり。走行距離三0六,六キロ。

 十二時、就寝。流石に疲れをる。すぐに眠る。